第43章 救済は新たな暴虐へ
「皆の者!我らが小雪姫様が見て下さっておる!勝利の女神は我らにありじゃー!」
「ウオォーーーッ!」
三太夫の叫びに、武者達が勇ましく歓声を上げる。
「風花ドトウ!この日の来ること、どれほど待ったことか!
この浅間三太夫、以下五十名、亡き御主君、風花早雪様の仇、積年の恨み、今こそ晴らしてくれようぞ!」
「ウオォーーーッ!」
三太夫がそう宣言し、武者達もそれを支持する。
「………小雪といい、奴らといい、まだこんな連中が残っていたとは………まあよい。
ああいう手合いには、完全なる絶望というものを味わわせなければな………」
不男ドトウが、余裕の表情で呟く。
ルナはというと、出て行くタイミングを伺いながらも、ニヤニヤ笑ってしまうのを止められなかった。
(ふふっ………ドトウ、数十分後には、生まれて来たことを後悔するほどの目に合わせてあげるから………
…………ああ、なんだろう?ちょっとワクワクして来ちゃった!変なの〜)
ルナは、自分が今、大義名分を利用して虐殺をはたらく、血に飢えた殺人者になろうとしていることに気がついていなかった。
「ウオォーーーーッ!」
三太夫達が雄叫びを上げ、雪に覆われた斜面を駆け下りる。
「さーてと、そろそろ行くかな。」
状況を見てルナはそう呟くと、小雪の方をチラリと見てウインクし、小雪の横からいなくなった。
(レイ…………大丈夫かしら………)
小雪はルナを信じていたが、やはり心配そうに、飛び出して行くルナを見ていた。
当然のことながら、小雪の側にはルナの影分身数体が控えて、緊急事態に備えていた。
本体のルナは、ドトウの列車が装甲を開く直前、三太夫達とドトウの列車の狭間に躍り出た。