第43章 救済は新たな暴虐へ
カカシはルナの手際の良さに感心しつつ、立って小雪と話していたルナに近づき、声をかけた。
(流石レイ………仕事が早いな………)
「お〜い、レイ、お帰り。」
「………カカシ先生!早く、早くしないと………」
そう言うルナのすぐ横で、氷が溶け、線路が露出していく。
「カカシ先生!早く、みんなを避難させて下さい!ドトウが来ます!」
「なに、ドトウが⁈」
カカシは雪の国に着いたときに予想していたとはいえ、ルナの言葉に驚きを隠せなかった。
「そうです、ドトウです!さあ、早く!」
ルナが焦って叫ぶ。
「わかった、レイ…………みんなに知らせよう。」
そう言うカカシの背後では、既に三太夫の指示で、撮影関係者が物陰に隠れ始め、当の三太夫は、姿が見えなくなってしまっていた。
ルナとカカシは頷き合い、ルナは小雪を担いで避難させ、カカシはナルト達に指示を出しに行った。
そして一行は、白い布を被って、物陰に隠れた。
ガタンゴトン、ガタンゴトン、ガタンゴトン…………
列車の音がすぐ近くから聞こえて来て、皆の顔に緊張が走る。
(さてさて、やっと会えるね、ドトウ。私があなたを、絶望の底に叩き込んであげるから、期待してなさい?)
ルナは憎むべき敵の来訪に、人知れず凄惨な笑顔を浮かべていた。
遂にドトウの列車がトンネルを通り抜け、停車した。
先頭車両の扉が開き、ミゾレよりも更に大柄な超不男が、姿を現す。
「………久しぶりだな、小雪。いるのはわかっている。出て来い。」
その超不男…………風花ドトウが、マイクを通して喋る。
その野太い声にピクリと反応する小雪を、ルナが背中をさすって落ち着かせようとしていた。
だが小雪は、自分がもう一度抗うことを決意したことを思い出し、勇気を振り絞って立ち上がった。
「…………風花ドトウ!私はここにいるわよ!私は…………あんたを倒すために、この国へ帰って来た!」
小雪が、つい昨日までの頼りない様子はどこへ行ったのか、まるで風雲姫を演じているときのように、力強く叫んだ。
その直後、ドドーンと音がして、ドトウの列車を、十数本の丸太が直撃した。
そして、それを放ったのは、三太夫率いる武者軍団だった。