第43章 救済は新たな暴虐へ
「きっと……小雪さんが好きだから、ですね。」
(なんでかわかんないけど、私小雪さん好きなんだよね〜。うん、そうだ!それが理由だ!)
ルナは少し考えて、そう言ってにっこり笑った。
「えっ⁈」
(わっ、私のことが好き⁈)
小雪はそれを聞いてひどく狼狽え、顔を微かに赤くした。
ルナの"好き"は勿論、人間として、女優としてという意味だったが、小雪はそれを勘違いしたようだった。
「あれ?どうしました、小雪さん?お嫌でしたか?」
ルナは小雪があたふたしているのを見て、少し不安そうに訊いた。
「い、いえ!全然、嫌なんかじゃないわ!」
(ど、どうして皇レイは、会って間もない私を…………
………………いえ、そんなことより、なんでそんなこと、さらっと言えちゃうの⁈
動揺しちゃってる私が、バッカみたいじゃない!)
小雪は、照れ隠しの意味も込めて、顔の前で手をブンブン振って、嫌ではないことを表現した。
「そうですか。なら、良かったです。
さ、戻りましょうか。」
小雪の答えに安心したルナが、そう言って小雪にもう一度手を差し出したとき、
遠くから、ガタンゴトン、ガタンゴトンと、列車が走って来る音が聞こえた。
それを聞いて、これから起こることを思いだしたルナの行動は早かった。
(まずい!急がないと、三太夫さん達が!)
「小雪さん!俺の背中に!早く!」
ルナが小雪に背を向けてしゃがみ、叫ぶように言った。
「わかったわ。でも………レイ、どうしてそんなに慌てているの?」
列車が走って来ていることの意味を知らない小雪は、ルナにおぶられながらも、少し怪訝そうに訊いた。
「すみません!今はお答えできません!とにかく急がないと!」
ルナはそう言って立ち上がると、小雪が気分が悪くならない範囲の速度で走り出した。