第43章 救済は新たな暴虐へ
それを聞いて小雪はふらりと立ち上がり、表情を歪めた。
「…………わかってるわよ!私だって、私だって…………………できることなら、父上の仇を討ちたいわよ!」
長年封じ込めていた感情の堰が綻びてきて、小雪はつい声を荒げ、叫んだ。
やっと本音を言った小雪に、ルナの表情が僅かに緩む。
(ほーらね、やっぱり小雪さんだって、そう思うよね。
子供の頃にお父さんも故郷も失って……………辛くて辛くて、意固地になってただけなんだよ。)
「でも…………そんなことしようとしたら、私は、今度こそ……………」
十年前のことを思い出したのか、小雪が力なく膝をつき、両手で顔を覆う。
ルナはそんな小雪の背中に腕を回して、優しく抱きしめた。
「………………小雪さん。そうならないために、俺がいるんです。だから、安心して下さい。
…………………俺が必ず、あなたを守ります。」
(そう…………小雪さん、あなたのことは、このうちはルナが、絶対に守りますから。)
小雪の耳元で、ルナは静かに、優しく囁いた。
ルナが抱きしめているお陰か、小雪は肩の力を抜き、少し落ち着いたようだった。
「皇レイ、あなた、どうしてそこまで……………」
そう呟いて顔を上げた小雪の瞳に映るルナは、とても優しげに、そして美しく微笑んでいた。
(この子…………たった今気づいたけど………とても、綺麗………………)
現在の状況のことも忘れて、小雪はしばし、その神々しさに見惚れた。
「………………小雪さん?どうしました?」
小雪が固まってしまったのを見て、ルナが小雪に呼びかけた。
「…………い、いえ。なんでもないわ。」
(はっ!私としたことが…………)
小雪は我に返ってルナから目を逸らした。