第43章 救済は新たな暴虐へ
次の日、船は港に到着し、一行は車に乗り換えた。
雪の国へ続くトンネルをくぐる前、車を一旦止めて、一行は休憩していた。
ナルト達が外で用を足しているのを尻目に、小雪が車から抜け出したのがわかったルナは、カカシには黙って、その後を尾けた。
雪原をひたすら走り、そして転んでボーっとしていた小雪に、ルナは優しく、声をかけた。
「……………小雪さん。こんなところで寝ていると、風邪をひいてしまいますよ。
さ、戻りましょう?」
「…………あんたは………皇レイ…………」
小雪が目だけを動かして、しゃがみこんでニコニコしているルナの顔を見た。
「あんた、わかってるでしょ…………私が雪の国に行きたくないの。なんでこんなに早く追って来ちゃうのよ……………」
小雪が不満そうな顔で、ルナを見つめる。
そんな小雪を見て、ルナは優しい表情を崩し、少し厳しい顔をした。
「………………小雪さん、あなたはどうなんですか?
あなたは、お父様の仇を討ち、雪の国を取り戻したいとは思わないんですか?」
「…………………」
小雪はルナの問いかけに答えず、黙り込んだ。
「……………もし、小雪さんが、ドトウを倒し、雪の国を取り戻したいと仰るなら………
…………俺は、必ずあなたの望みを叶えます。だから………………
……………………春を………希望を信じて、立ち上がりませんか?」
ルナは小雪を、強い意志の篭った、血のように紅い瞳で見つめた。
その鋭く清らかな視線に射抜かれて、小雪の心は揺れた。
「…………私……私は…………」
小雪が、喉の奥から搾り出したような声で呟く。
「……………さあ、小雪さん。決めるのはあなたです。
今、俺と立ち上がるか、逃げて逃げて、一生ドトウの影に怯えて生きるか……………
二つに一つです。ただ、一つ忠告をさせていただくと………………
………………ここで逃げたら、あなた、一生後悔しますよ?」
ルナは小雪の気持ちが揺れているのがわかって、そう畳み掛けた。