第42章 氷雪の地へ
次の日、小雪達役者は、船の上で撮影に臨んでいた。
ルナを含めた七班は、その見学をし、改めて富士風雪絵という女優の演技の素晴らしさを目の当たりにしたが、
同時に、小雪の人柄とのギャップに、がっかりもしていた。
撮影の途中、船酔いになったルナは、船の先頭に来て潮風にあたり、気分が良くなるのを待っていた。
「う~…………気持ち悪い……………」
(あーあ………海は綺麗で、風も気持ちいいんだけど……………
……………船酔いというものの存在忘れてたわ。乗り慣れてないせいかな?
そう言えば、前世でもよく酔ってたな……………あれ?)
ルナは低い声で呟いた後、あることに気がついた。
(頭痛、倦怠感、船酔い…………………全部、私の前世での持病じゃん!
もしかして、こういう感覚的な不調は、私の精神の弱さに、リンクしてる?
てことは、私がこういう不調とおさらばするのは、不可能ってこと?)
ルナは妾の魂の活動が関係しているとはいざ知らず、見当違いな考察をして、勝手に絶望していた。
チッ、仕方ねえ、少し大人しくしてやるか。
妾は色々な人間とルナの身体の間を行き来していた我が魂の活動を沈静化し、なるべくルナに集中させ、回復を待つことにした。
「お~い、レイ、どうした?」
船の先頭でグッタリしているルナを見かねて、カカシが声をかけて来た。
「あ…………カカシ先生………すみません、少し、酔ってしまいまして…………
…………でもきっと、もうすぐ治りますよ。」
ルナがいかにも申し訳なさそうに笑う。
そう言うルナの顔は蒼白で、物凄く調子が悪いのがバレバレだった。