第42章 氷雪の地へ
ルナが小雪の気配がする方へ近づいて行くと、そこはやはりバーだった。
ルナは大人の雰囲気漂う店内に入ることに抵抗を感じつつ、呑んだくれている小雪に、背後から声をかけた。
「………こんにちは。富士風雪絵さん。」
「………誰よ、アンタ?」
小雪が不機嫌そうに、ルナを横目で見る。
「俺、皇レイと申します。あなたがさっき痴漢撃退スプレーをかけて撒いた、ナルトの仲間です。
俺の任務は、あなたを次のロケ地まで、護送することです………多分。」
(私はまだ、直接依頼を受けた訳じゃないから、知らないふりしといたほうが良いだろうな………)
ルナが、若干歯切れが悪く答える。
「はぁ?多分?」
小雪がルナのはっきりしない話に、バカにしたように首を傾げた。
「………はい。多分です。」
ルナはそう言うと、人畜無害そうな笑みを浮かべて、小雪の隣に座った。
「担当上忍に、任務の前にあなたの映画を見るよう言われていましてね。
映画館の外でウロウロしていたら、馬に乗ってスタントマンから逃げて行くあなた。
これはもう、ロケ地に行きたがらないあなたを護送する任務に違いない、と思って、ずっと尾けて来たんですよ。
あ〜、疲れました。ナルトってば尾行が下手だから……………」
「あっそう…………でも、私は雪の国になんて、絶対行かないわよ。」
酒に酔った小雪は、うっかり自分の行き先を喋ってしまっていた。
「へえ、雪の国ですか…………良いですね。あ、そう言えば、もうすぐ雪の国行きの船が出航するような………」
ルナがそう言いかけたとき、二人の背後に男がゆらりと立ち上がり、出口か小雪かを目指して歩いて来た。
ルナはいつでもそいつを吹っ飛ばせるように警戒をしていたが、その必要は無かった。