第41章 調和の綻
「ええとですね……俺はその昔、風の国でも、火の国との国境付近に住んでいまして……」
ルナは赤い瞳を伏せ、喋り始めた。
「………ほうほう。他国生まれだったか。それで?何故木ノ葉に越して来た?」
(風の国か………先生の遠縁がそんなところに住んでいたなんて………)
綱手は遠慮なく疑問をぶつける。
「えーと、それは両親というか、一族が全員死んだので………行くあてが、三代目火影様のところしかなくて………」
(あー!ヒヤヒヤする!もう本当のこと言っちゃいたい!でも、我慢!
綱手様にバラしたら、計画が頓挫!今までの苦労も水の泡!それはダメだもん。
うちは一族襲撃事件のことも話さなきゃなんないだろうし。躱せないようなら、最悪別天神も使っちゃおう。)
ルナは言いづらそうに話し続けた。
「なに?一族が全員死んだ?」
(そんな事件があったなんて、聞いたこともないが…………)
綱手は眉間に皺を作り、驚いたように聞き返した。
「はい………」
(あ、ヤバい!ちょっと疑われてる!綱手様、顔に出てますよ!)
ルナは自分の犠牲になった者たちへの申し訳なさが半分、現在の状況に対する危機感が半分で、薄く冷や汗をかき、俯いた。
綱手は、ルナの説明を聞いて考え込んだ。
(こいつの名は皇レイ………ってことは、皇一族か…………聞いたこともないな。比較的小さな集団だったのだろう。
まあ、他国のことだから、私の知らないこともあるだろうしな。で、一族が全員死んだと………)
机を挟んで綱手の目の前には、青い顔をして、細い身体を僅かに震わせている、歳の割に長身の少年がいた。
(どうやら、かなり参ってるみたいだな……カカシも昨日私が帰った後、一度倒れたと言ってたしな…………
…………流石に、どうしてそうなったのかは、訊けんな………まあ、先生のお気に入りのようだし、身元の方はまあ、大丈夫だろう。)
「…………わかった。変なことを訊いて悪かったな。」
綱手は、皇レイという少年の過去を漁るのはやめることにした。
「いえ。火影様が謝るようなことではございません。」
(あ、よかった!綱手様、突っ込んで来なかった!)
ルナはホッとしてそう言った。