第41章 調和の綻
「っ…………痛いよ、ナルト。」
殴られたにも関わらず、ルナはごくいつも通りに、物柔らかにナルトに笑いかけた。
そして唇の端の赤い血を、白く細い指で拭い取った。
(傷はもう治ったけど……もっと怒らせちゃったか…………本音って言うもんじゃないな…………)
当のナルトはといえば、目に涙を浮かべて、ルナをジッと見ていた。
「いくらレイでも許さねえ…………俺の大事な仲間をクズ呼ばわりするなんて、ぜってー許さねえ!
レイはいつも俺達のために…………できること全部してくれて………………
……………それがたとえ自分のためだったとしても、俺は嬉しかったんだってばよ!だから、そんなこと言うなよ!なあ!」
そう叫ぶナルトを見て、サクラとサスケは、自分も同じ気持ちだとでも言うように、確かに頷いた。
「そうよ!レイ君は、いつも一生懸命で、優しくて……………私達の最高の仲間よ!」
「今は俺も、ナルトとサクラに同感だ。
レイ、お前は、生きているのもおこがましい奴なんかじゃない!」
「そう……かな……………」
ルナはナルト達の気持ちを嬉しく思うと同時に、今更ながら正体を偽っている自分が嫌になってきた。
(ナルト、サクラ、サスケ………………ありがとう。そう言ってもらえると、生きてても良いって言われてるみたいで、嬉しいよ。
でもごめんね、三人が知ってる皇レイは、本当はいないんだよ…………………)
「………………わかったよ、ナルト。もう言わない。」
ルナは一番興奮しているナルトを落ち着かせたくて、穏和に言った。
続く言葉は、ルナの心からの本音だった。
「………………だから、お前も約束してくれ。
………………サスケを、頼んだ。」
「?………それってばどーゆう………」
ナルトが、意味がわからないというふうに言う。
「ん?………いや、なんでもないよ。」
ルナはふふっと笑って、ナルトをはぐらかした。