第39章 発覚
「なんだと………何も、何も理由が無いだと?
神隠れの里長……ルナの両親は、自分の愛のためだけに全てを………里人全員までも、犠牲にした?
ルナただ一人のために………?」
妾は大きく、深い溜息を吐いた。
まさか、ルナの両親がルナのために全てを犠牲にしたことに、"愛しているから"以外の理由が、何も無いとは………
しかも、双子の片割れを犠牲にしてまで、そんな決断をするなんて…………理解不能だ。
もう、何が何だかわからなかった。
ただ一つわかったことは、人はいつも論理的に行動できる訳ではないと言うことだ。
いや、それは知ってはいた筈だったが、こんな形で思い知らされるとは…………
「………はい。紅桔梗様のお造りになった仕組みは、千年で崩壊してしまいました。
…………いえ、無礼を承知で、言わせていただきます。」
李蘭はそう言うと、妾を鋭い視線で射抜いた。
「……………紅桔梗様、たとえ百年に一度だけであっても、生贄を捧げなければならない………
………必ず誰かが犠牲になる、そんな仕組みは間違っています!」
そう叫んだ李蘭の深緑の瞳には、薄い水の膜が張っていた。
見たことがない李蘭の剣幕に、妾は少し驚いたが、顔には出さず、黙っていた。
「ルナ様のご両親は、ルナ様を犠牲にするくらいなら、この呪われた里の残酷な制度を、ご自分の代で終らせようと仰いました!
これ以上の依り代を出さないため………苦渋の決断でもあったのです!
紅桔梗様、あなたがなさったことは………あなたの愛するお子様達を、苦しめただけです!
ルナ様が………一体どれだけ苦しまれたか、ご存知なのですか⁉︎
残された者が、どんな思いで生きていくのか、あなたにはお解りになるのですか⁉︎」
いつも冷静沈着な李蘭が、ありえないほど取り乱し、泣き叫んでいる。
シスイ達はやっと状況を理解したのか、押し黙って俯いていた。