第39章 発覚
「まあ、那由他のことは、李蘭、後でなんとかしてくれ。それよりも………
…………ルナ、一旦どこかに行っていてくれないか?」
妾は李蘭と那由他に我が里の滅亡が起こった経緯について詳しいことを訊きたくて、ルナの影分身にそう命じた。
依り代を納めたくないがために、里人を全員殺すなんて、普通の人間には到底できないだろう。
だから、なにか李蘭達がルナに言っていない、特別な事情があるのだろう、と妾は推測していた。
今の妾は、複数の身体の中に同時に入り、その身体が思っていること、感じていることを、
自分で経験したかのように感じることができる。
だが、わかるのは"今"考えていることや、"今"思い出していることだけで、その記憶までは覗けない。
この十数年、李蘭も那由他も、神隠れが滅びたことについて、説明を求められたとき以外は、考えもしなかった。
…………まあ、考えたくない気持ちはわかるが。
説明しているときも、あらかじめ作っておいた台詞を読んでいるかのようで、"記憶を呼び起こす"という行動を、全くしていなかった。
だから、妾が知りたいことを知るには、李蘭達に直接訊かねばならなかった。
だが、ルナの前でそんなことを訊けるほど、妾は阿呆ではない。
その話がただ一人の生き残りであるルナの精神をこの上なく苛むことくらい、サルでもわかる。
「えっ………でも……」
「安心しろ、約束は守る。それと、妾のことは忘れてもらう。」
戸惑うルナの影分身の頭に神速で手を当て、この一部始終の記憶を封印し、都合よく上書きした。
そして影分身を構成していたチャクラを全て吸い取り、強制的に術を解かせた。
それから、ルナが開発していた胡蝶之夢とかいう術で、上書きした記憶を送った。
ひらり、と気流を起こさずに羽ばたいた金色の蝶が、壁をすり抜けて、影分身達の元に飛んで行った。