第38章 偽装工作
「…………ルナ……」
イタチは妹が自分のしようとしていることに気がついていたことと、妹の正直な気持ちを知って、
どうしたら良いのかわからなくなっていた。
(ルナは、俺に死んで欲しくないと思っている………
……でも、俺はいずれサスケに殺されねばならない……一体、どうしたら………)
ルナの影分身はイタチが考えていることに気がついてイタチの腕から逃れ、寂しげに、そして悲しげに笑った。
「イタチ兄さん、わがまま言ってごめんなさい。
でも、私はイタチ兄さんに死んで欲しくないの!イタチ兄さんを死なせるくらいなら…………
…………死んだ方がマシ!」
イタチの情に訴えかけるなんて卑怯だとわかってはいたが、ルナにはそれを抑えるだけの自制心は無かった。
ルナの影分身は叫ぶようにそう言うと、逃げるように暁のアジトから飛雷神で消えた。
後には、ルナとサスケの間で揺れ、迷い苦しんでいるイタチが残された。
(ルナが、死んだ方がマシだと言うなんて…………俺は一体、どうすれば良いんだ…………!
俺のしたことは間違いだったのか………やはりあのとき、サスケも連れて来るべきだったのか?
…………いや、それはやっぱりダメだ。ルナならともかく、サスケが俺と一緒にいるのは、危険過ぎる。
俺にもしものことがあったとき、巻き添えになりかねない。
でも、このままではルナが…………はっ!)
イタチはそこで、ルナが自分の代わりに、サスケの憎まれ役を買って出かねないことに気がついた。
(ルナはまさか………俺の代わりに…サスケに殺されるつもりで………?
死んだ方がマシだと言うくらいだ、ありえなくはない。
まずいぞ……俺には、ルナを止める手段が無い。
俺はルナが木ノ葉のどこにいるのかなんて知らないし、本体と影分身の区別すらつかないし、
ルナから目を離さないでいることも、できない。
一体どうしたら…………)
イタチは目の前に立ちはだかる無理難題に、頭を抱えた。