第38章 偽装工作
「ルナ、ちょっとおいで。」
夕食後、風呂に入ったイタチは、ルナの影分身を部屋に呼んだ。
「何、イタチ兄さん?」
(………ヤバい………勘づかれちゃったかも?)
ルナの影分身は努めていつも通りに返事をし、イタチの部屋に入ると、後ろ手でドアを閉めた。
「…………ルナ、今日、俺と鬼鮫と接触した下忍は、お前なんじゃないのか?」
(もしそうなら、何故今ここにいるのかは謎だが………いや、あのとき出した影分身か?)
イタチは回りくどい訊き方をするのをやめて、ストレートに訊いた。
その言葉に、ルナの影分身の瞳が揺らいだ。
(………やっぱり、バレたか………私ってダメだなぁ………)
「………………やっぱり、イタチ兄さんには敵わないな。」
ルナの影分身は少し迷うような素振りを見せた後、諦めの笑みを浮かべた。
「………ルナ………やはりお前だったか………」
イタチは思わずルナの影分身を抱き寄せて、きつく抱きしめた。
ルナの影分身は、イタチに抱かれたまま説明を続けた。
「…………そう。あのとき、鬼鮫さんの鮫肌を弾いたのも、月読にかかったのも、みんな私。
ここにいる私は影分身。何で術が解けないのかは謎だけど。本体は今、木ノ葉で寝てると思うよ。」
ルナの影分身はうなされているとは言わず、敢えて寝てるという表現を使った。
「…………イタチ兄さん、ごめんね。
イタチ兄さんが何を考えてるかは、わかってる。
でも、私はそれが嫌なんだ。
……………………だから……ごめんなさい。」
(イタチ兄さん………サスケを救う方法は、きっと他にもある筈だよ………だから、もうやめようよ………
…………イタチ兄さんが死んじゃったら、私…………生きていけないよ…………嫌だよ……それだけは嫌………
………イタチ兄さんのためなら、なんでも捨てるから……だから、お願い………生きて…………)
本音を率直に言えないまま、ルナの影分身の目からは、涙がポロポロと溢れ、イタチの黒いマントにいくつも染みを作っていた。