第38章 偽装工作
ルナの影分身は飛段と角都が帰って来ると、満面の笑みで二人に駆け寄った。
「おかえりなさい!飛段さん、角都さん!」
「お〜、ルナ、帰ってたかぁ!
元気してたかぁ〜?」
「…………フン。」
飛段は機嫌が良さそうにルナの影分身の頭をガシガシと撫で、角都は不機嫌そうに見えて、実はそうでもなかった。
「ああー!飛段さん酷い!髪がぐしゃぐしゃ!」
ルナの影分身はそう言うと、非難されて慌てる飛段から一旦離れ、乱れた長い髪を手櫛で整え始めた。
そんなルナの影分身を見て、角都はポケットをゴソゴソと漁り、薄い板状のものを取り出した。
「お前もそろそろ年頃だろう。これくらい持っておけ。それはお前にやる。」
そう言って角都が差し出したものは、綺麗に彩色された櫛だった。
ルナの影分身は角都が自分にものをくれたことに驚いたが、そんなに間が開かないうちに我に帰り、
「ありがとうございます、角都さん!
大切にしますね!」
と言って嬉しそうに笑うと、早速それを使って髪を整えた。
「ふっ…………」
角都はまるで孫を可愛がるおじいちゃんのような顔で、満足そうにそれを見ていた。
その様子を見て、イタチと飛段はぽかーんとしていた。
「角都が…………人にものをあげた…………?」
「いつあんなもん買ってたんだ?」
頭の中に角都が一人で櫛を買っている場面が浮かび、同時にこみ上げる笑いを、二人は必死に堪えた。
(………角都まで味方につけるとは………やはり、ルナは凄いな。角都が、完全に孫を甘やかしているおじいちゃんに………)
(ヤッベェ、おもしれぇ!角都のヤツ、ルナにデレッデレだ〜!
まあ確かに、ルナはカワイイし、なんつーか、構いたくなるけどなぁ。角都、口は隠してても目元が緩んでるぜ〜)
ルナにデレている角都が二人にとってはかなり面白かったが、
ここで笑うと半殺しに遭うかもしれないので、顔に出さないよう気をつけた。