第37章 暁の二人組、襲来
ルナはその一瞬後、影分身を一体出し、影分身を鬼鮫のところに向かわせた。
「うちはイタチさん、干柿鬼鮫さん、ナルトを攫うのもサスケと戦うのも、俺を倒してからでお願いします。」
ルナは感情を殺し、疎ましげにこちらを見るイタチにも臆さず、堂々と言い放った。
サスケが手を出すなとかなんとか言っていたが、今は状況が状況なので、無視した。
「……良いだろう。」
イタチはそう言うと、ルナに体術をかけて来た。
ルナはイタチと一対一になったせいか、攻撃の矛先がサスケに向いていないせいか、押され気味だった。
防御ばかりしていて、攻撃は一切できず、そのうち防御でさえも、やる気の無いものになっていた。
「………どうした、そんなものか?」
イタチがルナの隙を突き、ルナの腹にイタチの蹴りがクリーンヒットした。
ルナは跳ね飛ばされて、壁に激突し、床の上に倒れた。
(やっぱり、ダメだなぁ、私……イタチ兄さんに、修行以外で、本気で攻撃なんて、出来ない………)
ルナの腹へのダメージはすぐに修復完了したが、イタチの蹴りの衝撃が、鈍痛となって残っていた。
闘志を無くし、起き上がらないルナにイタチがのしかかり、首を絞め上げる。
「くぁっ………くっ…………」
声を出すこともできず、ルナは小さく呻いた。
イタチは情け容赦なくルナの首を握り締めていたが、手を引き剥がそうともしないルナを、少し妙に思った。
(こいつ………何故抵抗しない?さっきまでの勢いはどこへ………)
イタチの顔の前には、手足をだらりと伸ばして、悲しみの篭った紅い瞳で自分を見つめる美しい少年の、呆けたような顔があった。
段々視界がボヤけて意識が朦朧として来たが、ルナはされるがまま、抵抗せずに、意識が薄れるに任せた。
(イタチ兄さんに殺されるのも……悪く無いな……
………流石の私も、酸素が無くなって代謝が不可能になれば、死ぬかもしれないし。)
ルナは一瞬、本気でそう思った。