第36章 奇跡と後始末
「はい、麦茶です。では、いただきましょうか。
…………ところで、それ取ってくれるんですよね?」
ルナは食卓についたカカシの前に麦茶を入れたコップを置くと、ニヤリと笑った。
「くっ……わかったよ。誰にも言うなよ。」
カカシは目の前に置かれた好物に観念して、マスクを外した。
マスクの下から、ルナの予想通りの、整った顔立ちが現れた。
「ふふっ、カカシ先生、やっぱり格好良いですね。」
ルナはカカシの素顔を見つめて、艶やかに笑った。
ルナのいつもと少し違う笑顔に、カカシの心臓は跳ねた。
(レイはときどき、こうしてすごく大人びた顔をするんだよな……
………教え子の、しかも男にドキっとしてる俺って…………)
「いやいや、そーゆーレイだって、よく見ると結構……」
カカシはルナから顔を背け、照れ隠しした。
「結構?」
ルナはカカシが焦っているように見えるのが面白くて、その先を促した。
「……うーん、レイはどっちかって言うと、かわいい、のかな……?線も細いし……
最初に会ったとき、一瞬女かと思ったぞ?」
カカシは首を傾げつつ、顔をポリポリ掻いて言った。
「はあ……そうですか………」
(あ、ヤバい!もっと筋骨隆々に変化しとけばよかったかな…………)
ルナはカカシの回答にギクッとし、それ以上外見の話を広げるのは控えた。
「……ところでレイ、お前そんなんで足りるのか?米とか魚とか、俺の半分もないじゃないか。」
カカシがルナの食事の量が少ないのに目をつけ、突っ込んで来た。
「え?ああ……俺、そんなに入らないんですよ………お気になさらず。」
ルナは正体がバレるんじゃないかとヒヤヒヤした。
「そんなことより、早くいただきましょう。冷めますよ。」
「……それもそうだな。じゃ、いただきます。」
ルナとカカシは手を合わせて日々の糧に感謝し、食事を開始した。