第36章 奇跡と後始末
ルナは頭を下げるカカシに呆気に取られたが、すぐに我に返った。
「カカシ先生、そんなに謝らないで下さい。報告が遅れた俺が悪いんですから。
そ、そうだ、今日は夕飯ご一緒しませんか?」
ルナは罪悪感や動揺を誤魔化すために、そう提案した。
「えっ⁉︎」
(レイが俺を晩メシに誘った⁉︎)
カカシはルナが相手をあっさり許し、自分の非まで認めた上に、唐突に夕食に誘われたことに驚いた。
「え?嫌ですか?」
「いやいや、イヤじゃ無いけども………」
「じゃあ、良いですよね!」
ルナは立ち上がると、有無を言わせない、天使のように無邪気な、でもどこか怖い笑顔を浮かべた。
「……わかったよ。何が食べたい?………詫びだ。俺が奢る。」
続いてカカシも立ち上がり、観念したように言った。
ルナはそれを聞いて両手をブンブン振った。
「悪いですよ、そんな。それより、俺が作りますから、俺の家に来て下さいよ!」
ルナはいつもの一歩引いたような態度は何処へやら、子供のように、カカシの手首を掴んで、軽く引っ張った。
最近カカシに嘘ばかり吐いているという罪悪感が、ルナを過度にフレンドリーにさせたのかもしれない。
「………わかったよ。わかったから、手ぇ放せ。」
カカシは幼児退行気味のルナに少し呆れたように笑うと、ルナの提案を承諾した。
「じゃあ、行きましょう!」
ルナはカカシの家のドアを開け、カカシと共に、茜色に染まり出した世界に出て行った。