第36章 奇跡と後始末
「まあ、俺のことは、そんなに心配なさらなくても平気です。
いざとなったら飛雷神でビュン、ですから!」
ルナはヒルゼンを元気づけるように、明るく言った。
「では、俺はこれで失礼します。お大事に!」
ルナはパッと笑うと、お辞儀をして、ヒルゼンの病室から出た。
ヒルゼンは、その笑顔から、ルナがこれからどうするつもりなのかを悟りながらも、何も言えずにその背中を見送ってしまった。
ルナが病室から出ると、カカシがいた。
「……あ、カカシ先生、こんにちは。では。」
ルナは色々聞かれたくなくて、カカシの横をすり抜けようとした。
「………待て、レイ。」
「……はい。」
カカシに呼び止められて、ルナは少しガックリしつつ立ち止まった。
「……話がある。ついて来い。」
「……はい。」
何も説明しないカカシに、ルナは嫌な予感がしたが、素直に従った。
そして連れて来られたのは、カカシの自宅だった。
ルナはビクつきながら出された茶を飲み、カカシは湯気を上げている茶には見向きもせず、ルナをジッと見ていた。
ルナは湯呑みを置くと、顔を上げて、カカシをまっすぐに見た。
「………それで、話ってなんですか、カカシ先生?」
ルナはさっきまでのオドオドした様子はどこへ行ったのか、うっすら笑みを浮かべていた。
「……レイ、アスマから聞いた。ナルト達を連れて行ったのは、影分身だったんだってな。
なら、本体のお前は、あのときどこで、何をしていたんだ?」
「えーと、サスケを追ってました。」
ルナは余計なことは喋らないように気をつけて、さらりと嘘を吐いた。
カカシはルナの答えに、眉をピクリと動かした。
「………レイ……それ、嘘じゃないのか?」
カカシはルナを訝しげに見つめ、問い詰めた。
「ふふっ、どうしてそう思うんですか?」
ルナは疑われても焦らず、反対に余裕たっぷりの笑みを浮かべた。