第35章 木ノ葉崩し
「はてさて、そろそろですかね。」
ナルト達が近くまで来ていることを察知したルナの影分身は、一旦決着をつけることにした。
ルナの影分身は、胸一杯に空気を吸い込むと、小さめの声で、静かに歌い出した。
その透き通るような声は確かに優しかったが、同時に神々しいほどに冷たくもあった。
「……私があなたを殺すから……あなたは天国に行ける……」
中忍試験始まって二度目の、魔声・子守唄の術である。
歌詞は全く子守唄らしくなかったが、ルナの影分身は気にしなかった。
実は歌声は術の媒体でしかないので、術の効果と曲調は一致しなくても良かったりする。
だがルナは、好んでなんとなくそれっぽい曲を選んでいた。
カンクロウはルナの影分身が歌い出してすぐ、歌声を堪能する暇もなく、眠りに落ちた。
ルナの影分身はカンクロウが眠ったのを確認し、
少し寄り道をするつもりで、徐々に近づいて来るナルト達を待った。
しばらくして、ナルト達が現れた。
「ナルト!サクラ!シカマル!パックンさん!」
ルナの影分身は大袈裟に振り向いた。
「あ!レイ!」
「え⁉︎レイ君⁉︎」
「なに?」
「ありゃあ?」
ナルト、サクラ、シカマル、パックンは、さっき別れて、足止めをしていた筈のルナが目の前にいたことに驚いた。
ルナの影分身は四人が不思議そうな顔をしているのを見て、苦笑いしつつ説明した。
「あー、ごめんごめん。さっきのは影分身。俺が本体だよ。」
半分は本当だ。
これ以上混乱させたく無いので、自分も影分身であることは明かさないでおく。
ルナの影分身の説明を聞いて、他の四人は脱力した。
(もし攻撃を受けて消えたらどうするつもりだったんだ、レイ……
まあ、レイがやられるなんてまず無いから、いいけどさぁ………)