第35章 木ノ葉崩し
「大蛇丸さん、もうやめませんか?」
ルナは大蛇丸に向き直ると、堂々と訊いた。
「その腕じゃ印は結べませんよね?
今ここから消えて下さるなら、俺は貴方を深追いしません。
さあ、早く。ね?」
そしてルナは、四紫炎陣と夢幻天球の一部を解除した。
ルナは朗らかに笑っていたが、その笑顔には有無を言わさぬ影が差していた。
大蛇丸は印が結べない状態でルナと戦うのは自殺行為だと悟ったようだった。
驚いた顔をした後、悔しそうな顔をし、黙って結界の外へ出て行った。
「さてと。」
ルナは意識を失い、もう殆ど死にかけているヒルゼンの側に跪いた。
「命遁・傷滅再生!」
ルナは器となるべきヒルゼンの胴体の致命傷を、完全に治療した。
「魂結びの術!」
そして、この日のために開発していた術を発動し、死神とヒルゼンの魂の引っ張り合いを始めた。
死神はなかなか譲ってくれなかったが、ルナは持ち前の身体の力……神の依り代としての力を駆使し、
ヒルゼンの魂の大部分を、ヒルゼンの身体に繫ぎ止めることに成功した。
だが残念なことに、ヒルゼンは大蛇丸と同じように、両腕の自由を失うことになった。
死神が、これだけは譲れないと言った様子で、ヒルゼンの魂の一部を飲み込むのを、ルナは特に思うところも無く見ていた。
(完全に繫ぎ止められなかったのは残念だけど……まあ、今後の展開を読み易くするには、これくらいでいいか。
三代目、ごめんなさい。これ以上やると私が魂を取られる羽目になりそうだし、
貴方に完全復活されても困るので、この辺にしときます。)
それから傷滅再生を使い、苦痛なく普通に生活することはできる程度まで、ヒルゼンの腕を治療した。
ルナは夢幻天球を解除すると同時に、飛雷神で瞬間移動し 、その場を後にした。
大蛇丸が去り、ルナの結界が解かれた後、屋根の上に横たわるヒルゼンを見つけて、
その場にいた暗部が駆け寄り、生きていることがわかると、病院に運んで行った。
それを姿を隠して見ていたルナは、ふふっと笑った。