第33章 休息
結果。
「さてと。やっと出来たな。じゃあ、行こうか。」
「はい!折角なので、歩いて行きませんか?ここから割と近くですよね?」
「ああ。そうしようか。」
「じゃあ……」
ルナは少し照れたように笑い、シスイの手をとり、指を絡めて握る。
ルナの小さくて細い指と、シスイの逞しい指が絡み合った。
そんなことをされて平常心でいられるシスイではなかった。
「ルナ、あの、手………」
シスイは少し赤くなって言った。
ルナにはシスイの赤面の訳はわからなかった。
「………手がどうかしましたか?」
ルナは不思議そうに訊いた。
「……いや、やっぱりなんでもない。」
シスイはルナには何を言っても通じないと思い、なんだかんだ言うのをやめて、ルナの手を握り返した。
シスイが握り返してくれたのを感じて、ルナはふふっと笑みを零した。
しばらく歩いて行くと、譜代地区の外れに、庭園のようなエリアがあった。
芝生が美しく刈り込まれ、夏の花々が咲き乱れていた。
ルナはその中で、枝先にピンク色の花をつけた低木を発見した。
「えーと、確かこれがキョウチクトウだったかな?なんかちょっと感動して来た……」
ルナはキョウチクトウの花を見つめ、目をキラキラさせた。
シスイはそれを見て少し引いていた。
(ルナは本当に毒が好きだな……)
「……ルナは、なんでそんなに毒が好きなんだ?」
シスイは疑問を口にしてみた。
すると、ルナの雰囲気が変わった。
「……なんと言うか……たったの数ミリグラムで死ねるって言うのが……自分の身の程を思い知らせてくれるみたいで………
……毒の前では誰もが平等、っていう感じがして…………漠然と、ああ、素敵だな、って思うんです………
別に人に使うのが好きな訳じゃないんです。苦しんでいる人を見るのは、辛いですし。
それに、毒を防ぐには、まず毒のことを知らないと。」
(とか言って、今の私は毒じゃ死なないけどね。前世は、よくそんなこと思ってたな………)
ルナはシスイの背を向けたまま、前世と同じような光のない目で語った。
「そうか……」
シスイは、ルナの理由が案外まともだったことに安心した。