第32章 予選
「しかし、一年であんなに差がつく訳はないでしょう。
油断していたとは言え、私は前にレイの幻術に引っかかった事もありますし……」
「まあ確かに、年齢はあまり関係ないじゃろう。まあ後は、家系か……」
ヒルゼンにはうまい言い訳は浮かばなかった。
家系という言葉に、カカシが反応した。
「そのこともお訊きしたいと思っていました。皇とは、どんな一族なのですか?
レイは以前の、例の波の国の任務中に、血継限界らしきものを使っていましたが……」
カカシは根掘り葉堀り訊くのは止めようと思っていたのを、もう忘れていた。
どんどんディープになるカカシの質問に、ヒルゼンは溜息を吐きたくなった。
(ルナの奴……サスケを守るためだったのであろうが、正体をバラすような行動は慎んでほしいのう……
お陰でカカシを誤魔化すのに苦労する羽目に……)
「皇一族についてじゃが……残念ながら良くわかっていない。儂にも詳しいことはわからんのじゃ。
うちはや日向と違って、皇一族は、外部に存在をアピールしたがらなかったのじゃ。
力は必ず、戦いを招くからな。そしてあの子は、その最後の生き残りでもある。」
「そうですか…」
(火影様にもわからない……?レイ、皇一族とは一体、何なんだ?何故滅びたんだ?)
「それで、転校時期についてじゃが……まあこれは単純に、レイの希望じゃ。喪があけたから、前を向きたい、とな。
あの子は強いが、心は年相応じゃ。脆くて、儚い。大人の助けが必要じゃ。だが、干渉し過ぎるのもいかん。
難しい年頃なのじゃ。まあ、他に比べれば、遥かに扱い易いだろうがな。」
「はあ…レイの前の学校での成績は?」
「全く問題ない。木ノ葉にいれば、間違いなく首席だったろう。」
「そうですか……」
(レイなら当然か…)
カカシは余り驚いていなかった。
「……カカシ、一つ言っておく。レイにはレイの事情がある。お前が土足で入り込んでいいものではない。
これは儂の責任でもあるが、レイの闇は深い。
あの子の過去について、お前に出来ることは何もない。これについては、放っておいてやれ。」
ヒルゼンはそう言い切った。
「……御意。」
カカシはモヤモヤしたまま、火影室を出た。