第32章 予選

しかし、サスケの心に、かつてルナが言った言葉が蘇った。


———————サスケ……世界とは、お前の認識が全てではない。それを忘れるな。


そう言ったルナは、とても悲しそうな顔をしていた。

(あれは、復讐なんてやめろ、と言う意味だったのか？他に真実があると？俺の知らない何かが？

…………でも、レイ、お前だって両親を…あれ？)

サスケはそこで、ルナが両親の死因については語らなかったことを思い出した。

(レイは、両親が何故死んだのかについては、言っていない……………

……でも、レイのあの強さからして、両親も相当強かったに違いない。

そう簡単に死ぬとも思えないが…………ん？)

そこでサスケの脳裏に、この間の子守任務で見た、ルナの苦しそうな表情が浮かんだ。

あれは…憎しみというより……………罪悪感に苛まれている顔だった。

(あの時は深く考えなかったが……まさか…レイは、両親の死に責任を感じているのか…？

自分の犠牲になった、と…………？だからレイはあんな顔を……………？

もし、俺がアイツを憎むように、レイは自分を責めているとしたら……

……………きっとそれは、俺以上に辛いんだろうな………)

サスケはルナの気持ちを想像して、いたたまれない気持ちになった。


ルナはそんなサスケの気は知らず、微笑を浮かべて、闘技場から出て行った。

(まあ、今までのところ、大体計画通りかな？引き続き、気を抜かずに行こう。)


あまりにいつも通りの笑みを浮かべているルナから、サスケは目を離せずにいた。

(レイ………お前はいつもいつも、無理して笑っていたのか…………？)

その笑顔の裏側に隠されたルナの哀傷を、サスケは初めて感じ取った。








闘技場からルナが退場すると、カカシが真っ先にやって来た。

「レイ、お疲れ！早速だけど、ちょっとついて来てくれ。」

「……はーい。」

ルナは何をされるかわかっているため、素直に従った。