第32章 予選
ルナは闘技場から、上で観戦していた大蛇丸を見上げ、笑いかけた。
(大蛇丸さん、まあ、ちょっとあっさりし過ぎな気もしますが、これでどうです?)
ずっとルナを見ていた大蛇丸はニヤッと笑って、頷いた。
(ドスじゃ役不足みたいだけど……貴女の力がこんなものじゃないってことは、よくわかったわ………
……何せ、私だって貴女の攻撃が見えなかったもの……体術だけであれなら、本気を出せば、もっと………)
大蛇丸はルナの優秀さに打ち震え、舌舐めずりした。
ルナはそれを見て少し引いた。
(げ、大蛇丸さん、なんか蛇っぽい………)
大蛇丸は、ルナが、ゲッ、と呆れた顔をしているのを見て、思わず舌を引っ込めた。
そこではたと、ルナに嫌われたくないと思っている自分に気がついて、唖然とした。
(私が、ルナちゃんからどう思われるかを、気にしている……?
そんなわけないわ。だって、あの子はただの…………)
大蛇丸は、ルナはただの器に過ぎないと、自分自身に言い聞かせた。
ルナと大蛇丸のやりとりに、今度は上にいたサスケが気づいた。
(レイとあの音隠れの忍…妙だな、意思疎通しているようにも見える……知り合いか?
でも、レイは風の国から来たはず…音隠れに知り合いなんて、いる訳………)
そこでサスケは、自分が皇レイという人間に対して、いかに無知であるかを思い知った。
(って、ほんの数ヶ月前に初めて会った俺が言うことじゃねえか。
俺はあいつが、いつどこで生まれたか、皇というのがどんな一族なのか、転校前のことは、
親を亡くしたこと以外何一つ知らないし、今どこに住んでいるのかさえ、知らない。
何故今まで、気にならなかったんだ?)
サスケは自分のルナに対する態度を振り返って、少し反省した。
(俺は………レイの強さばかりを気にして、あいつ自身を見ていなかった………)
自分が復讐を志していることを、サスケは少しの間忘れていた。
それに気がついて、サスケは慌てて、自分の気持ちに蓋をした。
(何を寝ボケたことを考えているんだ、俺は!俺は、復讐者だ!強さだけを求めていればいい!)