第32章 予選
「では、始め!」
月光ハヤテが開始の合図を出すと、ルナはまず神速でクナイを二本、投げた。
ガキーンガキーン!
「なにっ⁉︎」
それはドス・キヌタの両腕についていた響鳴穿に過たず命中し、破壊した。
会場は、ルナの投げたクナイのあまりの速さと威力に、ぽかーんとしていた。
(下忍の投げるクナイじゃねーよなぁ………)
カカシは二度目ながら全く見えなかったルナのクナイが、ドス・キヌタに当たって床に落ちたのを見て思った。
「はっははは、君の攻撃の要は破壊したよ。
さて、どうする?どっかの誰かみたいに腕を無くしたくなかったら、降参することだね。」
ルナは余裕の表情で言い切ったが、心の中では、
(前から思ってたけど…………呪印痛い…マジうざい…どーにかなんないかなこれ…て言うか早く終わらせたい…………)
と、文句タラタラだった。
「……っだからなんだ?こんなものなどなくても、お前を倒すくらい出来る!」
ドス・キヌタはそう言ってルナに向かって来た。
(は~あぁ、面倒臭いなぁ…さっきとはえらい違いだな……………音隠れの誇りでも賭けてんのかね。
……ま、いいや、こうなったらこうなったで…………)
ルナは呪印が暴走してしまうので、余り派手な術は使えない。
予定通り、当て身で気絶させてやることにした。
ドス・キヌタは勇ましく向かって来たが、その動きはルナにとって呆れるほど遅かった。
(なんだ、作戦立てるまでもなかったな。)
ドス・キヌタが一歩踏み出す間に、ルナは得意の瞬身でその後ろに回り込み、凄まじい速さで当て身をした。
その手の軌跡が見えた者は、誰もいなかったので、
会場の人々には、ドス・キヌタが突然目眩か何かを起こしたようにしか見えなかった。
ドス・キヌタは、あっさり目を回して倒れた。
「ハヤテさん、これでどうです?」
ルナは何が起こったのかわからずぽかーんとしている月光ハヤテに、判定を頼んだ。
月光ハヤテはルナの声を聞いて我に返り、ドス・キヌタが気絶していることを確かめ、
「えー、勝者、皇レイ!」
と言った。
会場にけたたましいほどの拍手が巻き起こった。