第31章 死の森
「……………レイ、大丈夫か?」
音忍が去ると、サスケが恐る恐るルナを気遣った。
「はっはは、平気平気。見苦しいとこ見せて、悪かったな……いつつっ……」
ルナはさっきとはうって変わって穏やかな笑みを浮かべつつ、またもや痛み出した首筋を押さえた。
「平気じゃねえじゃねえか……」
(無理しやがって……いや、俺達が無理させたのか……俺達が弱いから……)
サスケは拳を固く握り締めた。
「サスケ、お前のせいなんかじゃない。全ては、俺が勝手にやったことだ。気にするな。」
ルナはサスケが考えていることを察して言った。
ついさっきまで、暴虐を尽くす享楽に酔い痴れていたとは思えないほど、その表情は優しかった。
「ま、そんなことより、傷見せろよ。治すから。」
ルナが手を差し出した。
「あ、ああ。」
サスケが躊躇いつつも傷を見せると、ルナは医療忍術を使い、サスケの傷を治した。
首筋が少しひりついたが、無視した。
「懐かしいな……」
ルナはイタチと一緒に組手をして傷を治していた幸せだった頃を思い出して呟いた。
「?……何がだ?」
「ん?ああ、こっちの話。」
何のことか訊いてきたサスケを、ルナは適当にはぐらかした。
(あの頃は、本当に本当に、幸せだったな……イタチ兄さんやシスイさんと演習に行ったり……
……サスケと積み木で遊んで……で、家には……フガクさんとミコトさんがいて……
……うちはのクーデターが現実味を帯びる前……)
「……っ……」
気がつくと、ルナの頰に、涙が流れていた。
目を擦っても擦っても、まるで涙腺が崩壊したかのように、後から後から、涙が溢れて来た。
自分には既に、泣く資格すらないとわかっていても。