第31章 死の森
「さあて、君が最後ですね。」
クスクスと笑って、固まっているドス・キヌタに向かおうとするルナを、やっと動き出したサスケが止めた。
「レイ、もうやめろ!もうそいつらに戦意はない!」
サスケは男同士でむさ苦しいとか、ホモ扱いされたらイヤだとかいう感情を頭の隅に押しやって、ルナを後ろから抱き締めた。
確かに甘いかもしれないが、仲間のために躊躇いなく殺戮をし、そして傷付くルナを、サスケはもう見たくなかった。
それだけではなく、ルナから何か……とても危ういものを感じて、ルナを繋ぎ止めることに必死になっていたのだ。
でなければ、今のサスケがこんな行動に出るなど、ありえなかった。
ルナの方は、サスケの思いがけない行動に少し混乱し、我に返った。
(サスケっ⁉︎あ、今私はサスケポジション、サスケがサクラポジションか!
…………サスケがもういいって言ってるし、やめておくか………ざーんねん。)
「……わかった。サスケ。大丈夫だ。」
ルナはそう言って風刃乱舞を放とうとしていた手をアッサリと下げ、サスケから離れた。
身体全体に広がっていた呪印は、ルナが落ち着くと元に戻り、首の一箇所に残るのみになった。
ドス・キヌタはそれを見ると少しホッとした顔になって、
「今の僕達では、到底レイ君には敵わない……これは手打ち料……虫が良すぎるようですが……
……ここはいったん引かせて下さい……その代わり約束しましょう。次は逃げも隠れもしません……」
と言って巻物を差し出した。
「そう。じゃあ、さっさと消えなよ。君達が狙ったサスケに感謝しな。」
ルナはドス・キヌタから巻物を受け取り、つまらなさそうに言った。
「……では、失礼します。」
ドス・キヌタは一礼すると、傷ついた仲間を抱えてルナの前から去っていった。