第28章 子守任務
湯殿に着くと、ルナは念のため、男湯に入った。
湯船に一人っきりで浸かって高く登った月を見つめていると、何故か腹の底から笑いが込み上げて来た。
波の国でのように大笑いする訳にもいかなかったので、ルナは湯船に顔を半分沈めて、ぷくぷく泡を作ってやり過ごした。
(はてさて、やっと一息つけた。寝言でイタチ兄さんとか呟いたらまずいし……明け方までここでボーっとするか……)
「………ふぇっくしゅん!」
ルナは笑いが収まると、くしゃみを一つして、湯船の中でしばし物思いに耽った。
(梵天丸様と遊ぶの、楽しいわぁ。Dランク任務も悪くないな………)
ルナは暗部時代に毎日のようにこなしていたS・Aランク任務を思い出して思った。
(あの頃は、殺しばっかりだったな………波の国でも、派手にやっちゃったけど。)
サスケを守る為だったとはいえ、殺さなくても良かったかな、と、今更ながら少し後悔した。
(まあでも、他人に武器を向けた時点で、同情の余地は無いか。じゃ、まあ別に良いや。)
ルナは精神を守る為に、自分の行動を正当化した。
勿論、ルナの考え方にも、一理あるのだが。
(それより、カカシ先生に怪しまれたり、サスケに引かれたりすることの方が問題だよ。
そこまで引かれて無いみたいで良かったけど…………)
ルナはカカシやサスケのルナに対する態度が、波の国に行く前とそう変わらない事を思い返す。
そこで、ルナは自分が多かれ少なかれ暗部の色に染まっていたことに、今更ながら気がついた。
(…………私に相応しい役回りは、殺戮兵器、ってことなのかな……昔は、死ネタにはめっぽう弱かったのに………)
前世で見たアニメに出て来たモブの犬が、事故で死んだだけで泣いていた事を、ルナはふと思い出した。
このときルナは、前世の自分が、デスゲーム系の作品を割と好んでいたことは忘れていた。
(……殺して殺されて…………虚しいな…でも、私にはイタチ兄さんとサスケがいる。二人を守る事だけ考えれば良いや。)
ルナは忍なら誰もが一度は考える問いから、目を逸らした。
とりとめも無い事を考えているうちに眠くなって来たルナは、湯船の中でうとうとし出した。