第25章 波の国
次の日。
ルナとサクラは、タズナの護衛についていた。
「ふぁ~~」
サクラが大きく欠伸をした。
「暇そうだな、お前らは。あのキンパツ小僧とスカした小僧はどうした?」
タズナが太い角材を運びながら訊いた。
「修業中。」
「お前らは良いのか?」
「私とレイ君は優秀だから、カカシ先生がおじさんの護衛をしろって。」
(私の影分身、ストライキとか起こしてサボってないと良いけど……)
ルナは数週間出しっ放しの自分の影分身のことを思い出して思った。
「……ホントか?まあ、レイだっけ?お前の方はそうかもな。」
タズナはルナをチラッと見て言った。
(ちょっとやり過ぎたか………)
ルナは溜息を吐いた。
暫くして、橋造りから降りたいというおじさんが現れた。
「協力はしたいが無茶をすると俺達まで目をつけられちまう!
それに、お前が殺されちまったら、元も子もねえ!
ここらでやめにしねえか……橋造りも………」
「そーはいかねーよ。この橋は儂らの橋じゃ。資源の少ない超貧しいこの波の国に、物流と交流をもたらすと信じて、
街のみんなで造って来た橋じゃ。」
「けど命まで取られたら……!」
「もう昼じゃな……今日はこれまでにしよう。ギイチ……次からはもう来なくて良い。」
タズナとおじさんの遣り取りを、ルナとサクラは傍観することしかできなかった。
その後、ルナとサクラはタズナと一緒に町に出かけた。
「タズナさん、すみませんね。」
「……何がじゃ?」
「何となくです。」
(再不斬を殺せたのに、殺さなかったことです、とは言えないしな……)
「そうか……」
タズナは何かを察したのか、それだけ言った。
そのまま特に会話もなく、八百屋にやって来た。
八百屋には、野菜も人も疎らだった。
「殆ど何もありませんね……」
「ああ……この国は貧しいからなぁ……」
ルナの呟きに、タズナが少し淋しそうに応えた。
「キャーー!チカーン!」
移動中、サクラが鞄に手を伸ばして来たおじさんを痴漢と勘違いして、回し蹴りを食らわしていた。
(あ、そうだ、サクラは体術にむいてるんだった。)
ルナは再不斬が復活するまで、サクラと組手でもしようと思った。