第4章 依り代の真実
『昔々、ある里………といっても火の国ですが………が激しい干ばつに襲われていました。
そして、生贄を捧げて、雨乞いしようということになりました。
生贄は、若い男だったそうです。
男が、まさに引き裂かれようとした時、その様子を見かねた一人の神が、男を救おうとして、大量の雨を降らせました。
が、力を使い過ぎてしまい、里の人に介抱されました。
そして生贄だった男と出会いました。』
「………で?」
『………で、色々あって二人は恋に落ちました。』
「はぶきすぎですよ。」
『千年以上前のことですから……まあその神は、家族を作って、幸せに暮らしてたんです。
…………あるときまでは。』
「なにが、あったの………?」
私が聞くと、李蘭は何かを決意したような顔で喋り出した。
『ある時、神は気づいたのです。子孫が増える度に、男や他の里人が弱っていくことに。
神は、それが自分の"精気を吸い取る能力"が子孫達に受け継がれ、それを子孫達が制御できていないせいだと悟りました。』
「それって……」
『そうです。神のこの能力が『命遁』の起源です。
神は、男と里人達を救うために、一つの"装置"を造りました。
それは、中に入った者のエネルギーを神の子孫達に分け与え、子孫に能力を乱用させない為のものでした。
ですが、その装置にも限界があり、一定の距離までしかエネルギーを届けられませんでした。
そこで神は、その範囲を囲む城壁を築き、この内部を神隠れの里とし、以後子孫達の外出を禁じました。
…………『神通眼』をもつ者を除いて。
『神通眼』は神の血を濃く受け継いだ証。子孫の中でも、この眼を持つものは、神の能力を制御することができ、外出が許されました。
………しかし、『神通眼』は、別の意味を持っていました。
特に金色の『神通眼』は、"依り代"に選ばれた証。
神は装置に入る前、百年に一度、必ず産まれる金色の目を持った"神の依り代"を、
………装置に納め続けるようにと私達と子孫に言い残し、装置に入り………
…………二度と出てこなかったのです。
その後、神の造った里は、"神の隠れた里"、即ち神隠れの里と呼ばれるようになりました。』