第17章 惨劇前夜、儚い平穏
「李蘭、那由他、シスイさーん!」
「お、ルナ!」
三人の名前を呼ぶと、シスイが真っ先に来てくれた。
「シスイさんっ!」
ルナはシスイに抱きついて、胸に顔を埋めた。
「はは、ルナ、今日はどうしたんだ?やけに甘えん坊だな。」
シスイはそう言いながらも、ルナの頭をよしよしと撫でてくれた。
「ふふ、シスイさんお父さんみたーい!」
「おとっ⁉︎俺はまだそんな歳じゃないぞ!」
「あはは!」
ルナは明るい声で笑った。
二人は、シスイの家でお茶を飲むことにした。
「おおー、シスイさん、相変わらず綺麗好き!」
「はは、そうかぁ?」
(ルナがしょっちゅう訪ねて来るから気が抜けないしな。)
シスイの家は掃除が行き届いていて、清潔だった。
家財道具は日に日に増えたが、それもちゃんと整理整頓されていた。
全て李蘭や那由他のお手製だ。
三人は、仲良くやっているようだった。
「シスイさん、夜遅くにすみません。」
「いいんだよ。ルナは任務終わったばっかなんだろ?ご苦労さん。」
シスイはお茶とお茶菓子(手作り)を用意しながら言う。
「シスイさん……私とイタチ兄さん、分隊長になりました。」
「そうか。」
ルナの暗い声から何かを読み取ったシスイは、それだけ言った。
しかし、ルナはそこから一気に愚痴モードになった。
「それが、酷いんですよ、もう。私の班、班員私しかいないんですよ?」
「えっ?それ、班て言わないんじゃないか?」
シスイは苦笑いした。
「そう!しかも、任務は暗殺と忍者集団殲滅ばかりですし。まあ、暗部自体がそうなんですけど。」
シスイはルナの口振りから、ルナが殺人に慣れてしまったことを悟った。
「なんだかなぁ……」
(暗部として、精神に負担をかけずに仕事ができることはいいことだ。でも……ルナに殺しに慣れて欲しくはなかったな。)
「……シスイさん?」
気づくと、ルナが不思議そうにシスイの顔を覗き込んでいた。
「いーや、なんでもないよ。」
シスイは笑って、さっき思ったことを打ち消した。
(どんなに手を血で赤く染めようと、ルナはルナだ。)