第17章 惨劇前夜、儚い平穏
………ザザザッ…ザザッ…ザッ…ザッ…
「………イタチ、明日からお前は分隊長だ。」
「……ルナは?」
「ルナも分隊長じゃ。お主らの反応は全く同じじゃのう!」
ルナは火影室に残して来た欣喜雀躍の極小の一匹にチャクラ糸をつけ、糸電話のようにして中の会話を聞いていた。
(まだ、有線が限界だな……)
まだ、神威で空間を繋いで盗み聞き、なんて器用なことはできなかった。
だいたい、繋ぐ空間が大きくなり過ぎて盗聴と言えなかったり、小さ過ぎて聴こえなかったりした。
もう少し練習が必要だろう。
そう、不思議なことに、ルナがコピーしたのは、"自分を神威空間に飛ばす能力"だけだった筈なのに、
ルナは全ての物体だけでなく、空間と空間を交換することができ、
ひいては"神威空間とこの世界の空間を交換する"というステップを飛ばして、この世界の空間どうしを継続的に繋げることができていた。
ルナはこの現象の理由を、コピーは能力の目覚めるきっかけに過ぎず、
自分の神通眼にはもともと、この大筒木カグヤの黄泉比良坂のような能力が備わっていたからではないか、と思っていた。
だが、神威というネーミングが気に入っていたため、ルナはこれを、オビトを真似して神威と名付けていた。
「では、失礼します。」
「ああ、気をつけて行かれよ。」
ガチャ
イタチが火影室から出て来た。
「ルナ、済まなかったな。」
「ううん、大丈夫。」
「………帰ろう。」
イタチとルナは家に向かった。
「ルナも分隊長か。何人班だって?」
「えーっと、一人………」
(もう、三代目が言っといてくれればよかったのに。)
ルナは気が利かないヒルゼンに、心の中で溜息を吐いた。
「えっ?」
イタチは思わず立ち止まった。
「上層部の推薦なんだって。」
「そうか……しかし…」
イタチは心配そうにルナを見た。
(ルナ、一人で………)
「大丈夫!私はもう死なない。イタチ兄さんこそ気をつけてね。」
「ああ……」
(もう、ってどういうことだ……)
イタチはルナの発言が引っかかったが、突っ込まないでおいた。