第16章 うちはシスイ
(いろいろあったけど、シスイさんを助けられて良かった。)
ルナは木ノ葉の近くに飛雷神で飛び、家路を急いでいた。
もうすっかり陽は暮れて、夜になっていた。
(今頃、イタチ兄さんは里の上層部にシスイさんが自殺したと報告している頃だろう。)
ルナは、イタチにシスイは生きていると教えようか迷って、教えないことにした。
これから先の展開に影響を与えないためだ。
(ねえ、シスイさん、私はイタチ兄さんとは全然違うでしょう?)
ルナは微かに唇の端をつりあげた。
その頃。
「シスイの自殺により、うちはの士気も戦力も落ちてしまいました。」
イタチは里の上層部にシスイの自殺を報告していた。
「己の命を投げ出さねば止めようが無かった訳か………」
ヒルゼンが沈痛な面持ちで言った。
シスイを死に追いやった(とイタチに思われている)ダンゾウは、涼しい顔をしていて、イタチは心の中で微かに憤った。
(どの面下げてそこに座っている………?)
「暗部から正式に自殺だと伝えておこう。良いなヒルゼン。」
ダンゾウが言った。
(三代目何もしてないじゃん!)
迷彩隠れの術を使ってその様子を見ていたルナの影分身もイライラしていた。
報告の後、イタチは一人で、集会所の石碑の前に立っていた。
(シスイ………)
(イタチ兄さん………)
正確にはルナの影分身もいたが。
そこへ、本体のルナが到着して、影分身は消えた。
「イタチ兄さん!」
「ルナ………」
振り向いたイタチは、これまでで一番疲れた顔をしているように、ルナには見えた。
「聞いたよ。」
「そうか……」
イタチは俯いて言った。
そんなイタチに何も言わず、ルナはイタチに抱きついた。
イタチは黙って、涙を流した。そして、
(ルナは絶対に守る。)
と、心の中で、今は亡き(とイタチは信じ込んでいる)シスイに誓った。