第16章 うちはシスイ
「じゃあ、まず一つ。
何であんな絶妙なタイミングで出て来れたんだ?」
「そんなの、イタチ兄さんを尾行してたからに決まってるじゃ無いですかー。」
ルナは事も無げに言う。
「そうか…イタチが尾行に気づかないとはな……………
じゃあ、何で尾行してたんだ?」
シスイは鋭く切り込んでいく。
「えーっと、それは…………」
ここに来て急に歯切れが悪くなった。
「ルナ、お前はもしかして……………
……全部、知ってたのか?」
シスイが訝しげにルナを見る。
「や、別にそう言うわけじゃ………」
(私は転生者です……なんて言えない〜!)
ルナの顔が少しだけ引き攣っている。
ルナは身内に嘘を吐くのが下手だ。
「どうなんだ?」
「…………シスイさん、すみません。それがただ一つです。それだけは勘弁して下さい。いつか必ず、お教えしますから。」
(まだ、明かすべき時ではない。)
ルナはシスイに手を合わせて懇願した。
(……仕方ないか。)
シスイはルナの必死な様子を見て、訊くのを諦めた。
流石に、命の恩人がこんなに嫌がることをする気にはならなかった。
「………わかったよ。何か訳があるんだろ?今は訊かないでおく。
……でも、いつかは必ず教えてくれよ?」
「……はい。必ず。」
ルナはシスイの目を直視して、誓った。
「まだまだ訊きたいことはあるからな!
例えば、どうしてお前は、油女スガルの毒の解毒剤を持ってるんだ?」
「ああ、それは私の趣味に関係あるんですけど……私の手を握って下さい。」
「………わかった。」
シスイがルナの手を握ると、二人はルナの飛雷神で、一軒の倉庫のような建物の前に移動した。
「この建物が、どうかしたのか?」
シスイが、全くわからない、というように言う。
「……まあ、入ればわかりますよ。ビビらないで下さいね?」
ルナはいたずらっぽく笑うと、扉を開き、シスイを中へ導いた。