第12章 帰郷
門をくぐった時に、微かに違和感を覚えたが、後回しにした。
中に入ると、ルナは、神隠れの巨大さを、改めて感じた。
遥か遠くに、天まで続いているように見えるほど巨大な塔が見えた。
「ここが、神隠れの里…」
「ここは神隠れの、外様地区です。他に、譜代地区と、親藩地区があります。」
「へぇ…」
(江戸時代かっつうの!)
ルナは、目の前に広がる、月光に照らされた純和風の家屋の群れに驚いていた。
そのどれもが、建てたばかりであるかのように、真っ白い壁と、黒い屋根瓦を保っている。
「私は何処に住んでたの?」
「神隠れの中枢、親藩地区です。」
「そう…連れて行ってくれる?」
「勿論です。ただ、折角なので、徒歩で行きませんか?」
李蘭が提案した。
「うん。そうしよう。色々教えて貰いたいしね。」
「無理、すんなよ。」
那由他が小さく呟いた。
三人は無人の美しい街に入っていった。
「そう言えば、どういう基準で住むところが決まるの?」
ルナは走りながら、疑問を口にした。
「親藩地区は、神隠れの始祖直系の子孫、譜代地区はその分家筋、外様地区は外からやって来た人など、神の能力を持たない人、
などが基準です。ちなみに、この里ができて以来、殆どが同族結婚だったので、ルナのご両親の例は稀なことなのですよ。」
「へぇ…あ、外様地区が終わった。」
「外様地区はあまり広くないからな。」
「ねえ、今私達は、里の中心に向かって走ってるんだよね?」
「はい。外側から、外様、譜代、親藩、と言う並びになっています。」
「じゃあ、次は譜代地区だね。」
譜代地区に入る門をくぐると、外様地区とはまた違った風景が、ルナを迎えた。
家が全体的に大きくなり、どの家にも広い農耕地が付いていた。
「わー、畑が一杯!」
「そうでしょう。北側には水田地帯もあるんですよ。」
「自給自足してたんだね…」
「分家筋は、里の外に出られる人間がそう多くは産まれませんでしたから…」
「ふーん…にしても広いなあ…」
「この速度ですと、あと数十分ほど譜代地区が続きます。」
「本当に広いね……」
数十分ほど走り続けると、里の入り口にあった門のミニチュアが見えてきた。