第11章 "根"接触
しばらくすると、ルナはシスイから離れた。
「取り乱してごめんなさい。」
落ち着きを取り戻したルナは言った。
「いいんだよ。お前にも辛いことはあるよなあ。」
シスイは敢えてそれ以上は言わなかった。
「ルナ様…隠していてすみませんでした。」
「俺も……」
ずっと黙っていた李蘭と那由他が、口を開いた。
「もう、いいよ、二人とも。私を生かしてくれて、ありがとう。」
「ルナ様……」
李蘭は顔を上げた。
「じゃあ、帰りましょうか。」
ルナは李蘭を若干スルーした。
「そうだな。」
(ルナはこうなることを心のどこかで予測してたから、イタチをおいてきたんだな………)
シスイはルナが事情を話そうと思った経緯については、特に気にしなかった。
「じゃ、シスイさん、またね!」
ルナはそう言って笑うと、手を振って家に入って行った。
その笑顔は明るく、一点の曇りもなかった。
「神皇ルナ、か………」
シスイはさっき知ったばかりの、ルナの本当の名前を呟き、しんみりしてから、ゆっくりと家に向かった。
(ルナ………ルナの様々な能力には、あんな起源があったなんて………
でもそのせいで、ルナは激しい罪悪感を背負ったまま、生きていくのか………
今は、辛うじて正気を保っている、ということか……だが、もし………)
シスイはルナの精神が崩壊しうる、最悪の事態について考えた。
それは、すぐに思いついた。
(もし…イタチが死んだりしたら…………ルナの精神は壊れてしまうだろう………
まあでも、イタチは優秀だし、第一ルナがそんなことを許さないだろうし、俺だってそうだ。
今のところは、なんとかなるか…………)
シスイはルナの精神が当分は崩れそうもないと結論づけて、少しだけ安心した。