第11章 "根"接触
「ははは。」
「ふふふ。」
「お前ら、笑うことないじゃないか。」
イタチは頰を膨らませている。
演習からの帰り、足を捻挫したイタチはシスイにおんぶされていた。
「すまんすまん、嬉しくてな。俺はお前を本当の弟のように思ってるんだ。
だからこうしてお前の世話が出来ることが嬉しいのさ。」
シスイはそう言いながらも、笑みを抑えきれていなかった。
「私も昔はよくやって貰いましたよ。」
ルナは二人の横から、一歳くらいの頃を思い出して言った。
「だろ?お前らも俺を兄だと思ってなんでも頼って欲しい。」
「うん。」
「はい。」
「ところで……暗部のことだけど………」
イタチが唐突に言い出した。
「俺の判断が正しかった、そうは言わない。
そもそも、忍の世界に正義と呼べるものがあるかどうかもわからない。」
シスイが、イタチが訊きたいであろうことに答えた。
「そんな……」
イタチは少し絶望したように呟いた。
(ま、そーだよね。)
ルナは正義だの悪だのという考え方が嫌いだったので、シスイの話には共感すれど、抵抗は全く無かった。
「俺達は自分を正義と信じて戦うが、敵も同じだとしたらどちらに真の正義がある?
物事の見方は一様じゃない。様々な視点から考えてみることだ。」
イタチはシスイの話を眠そうな暗い顔で聞いている。
「写輪眼を使って疲れたか?眠っていいんだぞ。」
「うん………」
「だが一つだけ確かなこともある。俺はお前を絶対に裏切らない。それだけは確かだ。」
シスイがそう言い終わるか終わらないかの間に、イタチの目は完全に閉じられた。