第1章 まぼろし
「で?何なの?」
なんちゃらティーっていう、夜に飲んでもダイジョウブらしいノンカフェインだっていうお洒落な紅茶を淹れてくれて。
「んふふ」
ちょっと面白そうに笑っている貴方に、こちらも笑みで返す。
「だから、笑ってんじゃねぇって。」
「面白いんだもんだって。」
「はぁ?」
「俺が潤くん家でお洒落な紅茶を飲んでるなんて、おもしろくない?」
「そんなことないんじゃない?だってさ。」
「だって…何?」
「かずは、俺の彼氏だろ?」
そう、なんだ。
貴方の中で、俺は”彼氏”なのね。貴方の。
「ねぇ、潤くん」
笑顔を貼り付けたまま
「潤くんにとって、俺ってなんなの…?」
残酷なことを聞いてみよう。
「え…?彼氏…」
貴方の顔から、笑顔が消えた。
「貴方にとって彼氏ってなんなの?」
「え…恋人」
貴方の瞳から、底冷えするような視線が発せられた。
「恋人って、何人も作るものなの…?」
”何人も”
俺はソファの前のローテーブルに、写真をばらまいた。
隣のぬくもりが、ふっと消えた