第1章 まぼろし
漸く収録が終わったのが、日付けをまわった1:00。
貴方と同じ車に乗るために
貴方より先に車に乗り込んで。
貴方のマネには苦笑されて。
貴方が乗ってきて。
無言の冷ややかな空気が車内に充満していても
そんな事はどうだって良いんだ。
貴方を俺のものに出来るのなら。
貴方の部屋に入れば
程よく暖まった空気がそこにあって
まるでそれはあなたの腕のなかのような温もりで
ちゃんと手ぇ洗えよ、ってやっぱり変に几帳面な貴方が好きで
先に部屋に入った貴方が、
一直線にキッチンに行くのもなんだか面白くて
「酒飲む?」
「ううん。とりあえずまだ」
「じゃ、適当に淹れるよ、なんか」
「よろしく〜」
適当になんか、っていう表現がいかにも貴方らしくて
ちょっと笑っていると、
「何笑ってんだよ」
って、隣に座ってきた少し笑ってる貴方に小突かれた。
こんな平和な時間も、愛おしい。