第1章 まぼろし
手に取ったそれは、俺が犯してきた罪の数々をしっかりと収めているものだった。
そう、それはやっぱり俺の責任。
なんとなくわかっていたんだ。
勘のいいかずに、そんなことすぐにバレるなんて。
今朝、楽屋でかずに呼ばれた時も、
とうとうバレたか…って。
俺が考えているよりずっと早くに
かずは気づいてしまったんだね。
「で…何か言い訳は…?」
言い訳なんてない。
俺がこうしたのは、事実だから。
かずの視線が冷たい。痛い。
視線の矢が、どんどん俺に刺さってくる。
はぁ…と溜息をついたかずは、やっと俺から目を逸らした。
「何とか言えよ…」
やっぱり俺は、何も言えない。
「ねぇ…お願いだからさ…黙んのやめてよ…」
「ごめん…」
かずの声に、湿度が伴う。
「俺も、ホントはこんな事言いたくなかったんだよ…」
「ごめん…」
「…謝りじゃなくて‼︎」
突然のかずの怒声に、驚きで顔をあげる。
「え…?」
「俺なんか遊びだったんだろ?だったらそうハッキリ言っ…」
瞬間、何も考えられなかった。
何も考えずに
力いっぱい抱きしめていた