第1章 まぼろし
相変わらず朝が不機嫌な貴方。
定位置の椅子に座って、スマホを扱い出す。
不機嫌な貴方が来たから静かになった相葉さんも、
今はファッション誌を読みふけってる(フリ)。
楽屋に流れるのは、いつもと変わらない空気。
俺も貴方も、
お互いに“メンバーの”距離感。
このグループとしての空気感に敏感な
俺と貴方だから、
これを壊すような事は望まない。
そう、壊さない方が良いなんて。
本当は、そんなの分かってる。
でも…、
でもね。
壊してみたくなっちゃったんだよ。
嵐の空気の、貴方を。
貴方を、俺のものにしたいから…
「ちょっとトイレ行ってくる」
「行ってら〜」
そう出て行く相葉さんを見送って、
「ねぇ」
「‥へ?おれ?」
まさか自分が声をかけられるなんて
夢にも思ってなかっただろう貴方は
「いや、あなた以外に話しかけないでしょ?」
「あ、うん、そう…だな」
「今日ってさ、夜空いてる?」
『へ…?』
貴方の瞳が、深く染まる。
深い深い色に、染まっていく。
『なんでそんなこと聞くの?』
っていう、
貴方の声にならない声なんて聞いてあげない
「空いてる…けど?」
真っ直ぐな貴方の瞳に、射抜かれそうになって。
「じゃあ…潤くんの家、行っていい?」
でも、射抜かれるワケにはいかないんだ。
貴方を、俺が手に入れるために。
貴方が放つ直線的な視線を感じながら
俺は、上目遣いっていう絶対的な武器をかざす。
「あ…良いけど…」
「じゃあ、仕事終わりでそのまま行くね。」
「おう。」
「ありがと」
今日、俺は貴方を手に入れるよ。
…潤くん。