第1章 まぼろし
眼が覚めると、そこは自宅のベットだった。
でも、なんだかあったかくて…
その温もりの正体は…
「え…?」
くぅくぅと寝息を立てている、憎たらしいほど可愛い顔をした、
柴犬顔のキミだった。
なんで…ニノが…
だって確か昨日は…ヤツが来て…喋って…
その後の記憶は、ない。
急いでベットサイドにある携帯を開いて…
未読メッセージを読む。
『潤、素直になんなきゃだめだからね。
幸せになるんだよ。』
送信元の名前は、ない。
アドレスから察するに、ヤツが俺の電話帳をいじって、
ヤツの登録を削除して…
返信をしようとしても、送れなかった…。
きっと、もう、会わないだろう…ヤツとは。
でも…
いつか、お互いに幸せになれた時‥
また、会えたらいいな、なんてさ…
俺の身勝手なのかもね。
「じゅん…くん?」
もぞもぞと動き出した隣の物体は…
目をこすってるのが、めちゃくちゃ可愛かったりして…
「ニノ…ごめん‥」
「ん?」
「いろいろ‥ごめん‥」
「ううん」
「もうちょっとだけ、待って…?」
「うん?」
「全部片付けてくるからさ…」
「わかった‥」
そしてニノは、
俺の腕の中で眠った。