第1章 まぼろし
「写真、撮って欲しいんだ」
『へ?』
その日コンサートが終わって、
貴方が機材変更の打ち合わせでまだホテルに帰ってくる前。
俺はヤツと打ち合わせていた。
「だから、その人と会って、ヤったっていう証拠が欲しいの」
『…ニノはずっと、それがしたかったんだ…?
「え?」
『ずっと、教えてくれなかったもんね。』
「あ…まぁ」
『で?誰のところに行けばいいの?』
「お前も知ってる人だよ」
ヤツに貴方の名前を告げると、
だろうね、って納得してて。
まるでヤツには貴方のことが分かってるような感じだった。
潤くん…
絶対、手に入れるんだから…。
愛してるから…。
俺のものになって?
オンナなんか要らないよ。
お願いだから、此処に来て…
気づいたら、ヤツとの電話のあと
頬を濡らす温いものがあった。
そして気づいたら
貴方が俺の隣にいた。
温もりがあった。
同じ、ダブルベットに2人、横たわった。
やっぱり、暖かかった。