第1章 まぼろし
貴方と目を合わせることができなかった。
会社が手を回したおかげで、貴方の記事が載ることはなかった。
そして、他のメンバーにそれが伝わることもなかった。
…だから、そのことを知ってるのも俺だけ。
どうやら貴方は俺がヤツを奪っている間に
新たなオンナを作っていたらしい。
そんなことをされるくらいなら、
ヤツを与えておけば良かった。
まだ、ヤツの方がマシだった。
『ニノ?どうしたの?』
ヤツに電話すると、すぐに出た。
「お前さ、俺ら東京に帰ったら、頼みたいことがあるんだけど」
『うん?なに?』
潤くん。
貴方のせいだよ。
俺がどんどんこうやって、黒く染まっていくのも。
薄汚くなって行くのも。
ねぇ。どうして…?
どうして俺じゃダメなの?
どうしてヤツでもなく。
新しい女なんかつくって…
ゆるさない。