第1章 まぼろし
「んなぁあ、ニノ、ちょっ」
「ヤろうよ?」
ニノは、部屋になだれ込むとすぐに俺の口内をを懐柔した。
「ど…したの、」
「だって潤くん…溜まってるカオしてる…」
君は艶っぽく笑うと、
ずりっと俺のパンツを下げた。
「何だそれ…」
「え…?」
下着越しに、チロっとのぞかせた赤い舌で
俺を舐めると
「だって、欲求不満ってバレバレだよ…?」
上目遣いで可憐に俺を見つめる瞳。
でも何処か、挑戦的で…
「潤くんさぁ…」
俺の脚元に跪いて、
「俺で良ければ、いつでも相手出来るけど?」
そう呟く君は、俺を見ているようで、
見ていないような気がした。
何か、別のものを捉えているような気がしたんだ。
「かず…」
いいよ、それでも。
君が良いと言うのなら。
それでも構わないよ。
「ベット、行こうか」
君の体ごと宙に浮かせて、ベットへと運ぶ。
ねぇ。かず。
君は俺を見ていないんでしょう?
なんだか、虚しいよ…
「んんっ…」
「潤くん、はげしっ…」
離した口から、銀の糸が伸びる
間接照明が、それを照らす
君との偽りの時間の、はじまりだ