第1章 まぼろし
セックスの最中のあの電話を思い出すと、ヤツを思いっきり壊したくなる。
とにかく潤くんからヤツを引き離さなきゃならなかった。
そしたら、潤くんは俺のものになる。
潤くんがヤツの身体に夢中なら、
ヤツを与えなければいい
ヤツを与えないで、ずっと求め続ければいい
そしてもう耐えられないんじゃないかってときに
俺が誘えばいい
だからそれから毎晩、ヤツを買った。
思った以上の出費だったが、ヤツがちょっと安くしてくれた。
ヤツとヤらない日もあった。
そんなにサカってない。
でも、潤くんからかかってくる電話には出させなかった。
ヤツも馬鹿じゃないから、そこはなんとなく察してくれた。
日中にかかってきたら、今は忙しいと言えとも伝えていた。
だから、潤くんは、欲求不満だったはずだ。
楽屋でも、難しい顔をしていることが多かった。
だからね、
やってみることにしたんだよ?
もう一度。
そして、いま。
俺の誘いに乗ろうとしてる、あなたがいる。