第1章 まぼろし
そのコを俺に夢中にさせるまで…2回でイケるか?
じゃあ、200万ちょいで行けるのか。
「いいよ。わかった。それで出そうか」
「即決?いいの?」
「…うん、急いでるし」
「そ、わかった。じゃ、とりあえずそいつ呼ぶわ」
個室から電話をかけながら出て行った彼は、この商売でどんだけ儲けてんだろ。
イタイ出費だなぁ…
車買った時以来だよ。ゲーム以外に金をつぎ込むの。
「ニノ、30分くらいで来るらしい」
「了解」
「お金さぁ、最初に二人が逢う前に俺に手渡しでくれる?」
「ああ。いつが空いてる?」
「いつでもいいよ。ここで、渡してくれればすぐ終わるし」
「わかった。じゃあ、明日ね」
「おう。…本当に急いでんだね」
また小さく笑った彼は、ちらっとスマホを見つめて
「ニノはさぁ。いないの、本命?」
「いるよ?」
即答できた。
何も考えずに…
「ふぅん?なんか、みんなそうなんだよな…」
「そうなの?」
「そう。潤や櫻井くんも、本命はいるって聞いた。」
へぇ。
潤くんにも、いるんだ。
好きな人。
個室のドアが小さく、ノックされたのを合図に
彼はゆっくりとドアを開けた。
「初めまして」
ドアから顔を出したそのコは、
どことなく俺に似ているのに気づいた。