第1章 まぼろし
「でさぁ。そのコ、俺にも回してほしいんだけど」
じっと俺を見つめる。
「潤や櫻井くんには秘密で、ってこと?」
「うん。」
一旦黙った彼は、内胸ポケットからタバコを取り出した。
「金なら積むからさ」
カチッとライターでタバコに火をつける。
ふっと短く笑って、俺から目をそらす。
「ニノが珍しいなぁ。」
「そんぐらい、やんなきゃなんねぇんだよ」
思ったより低く出た俺の声は、
自分が認識しているよりもはるかに、
本気で潤くんがほしいと思っている
そういう心の声を表していた。
「いくら出せる?』
「デフォルトはいくらなの?」
「そのコは初回10」
…高い。
「二回目以降も続けたいっていう双方の合意があれば、その後はお互いに相談してもらってる」
「へぇ」
「ただし、その内30%は俺がもらう。あと、今回みたいに秘密厳守なら」
「いくら?」
「先に別途50、もらっておく」
要するに、初期費用に60万。
「で?」
「もし何か情報がバレた場合には、30は返金する。だけど、バレなかったら成功報酬として100もらう。」
「その、秘密厳守の時は、どうやって情報が漏れないようにしてんの?」
「もちろん、本人の意識の問題もあるけど…例えばニノが、そうしたいんだったら、ニノのマンションに部屋を借りて、そこに住んでもらう。」
なるほど。それでその値段ね。
「その部屋代とか、別途請求したりしてこないよね?」
「あぁ、それはしない。大丈夫。」