第1章 まぼろし
「…へ?俺?」
全く何も予想していなかったのか、裏返った潤くんの声が響く。
「そうだよお前だよ。」
「え…?何?」
「お前さぁ…」
顔を上げた翔さんの視線と、潤くんのそれが交錯する。
「アレ、何とかしろよ…」
”アレ”…って、何?
「あ、うん。そろそろ片つく頃だと思うから。」
「マジ急げよ…こっちに連絡ばっかりくんの困るんだからさぁ。」
「あ、ごめんごめん。何とかしとく」
「ふざけんなよ…」
なにこの会話…
怪しさ満点…
二人だけの世界、感が半端ない…
潤くんと話す翔さんは、心なしか機嫌が良くなっていて。
くそ。
なんか、もやもやする。
「なに、翔ちゃん。”アレ”って…」
不審がった大野さんが尋ねても、
「ううん。ちょっと潤に貸しがあってさ。」
「ふぅん…」
ちょっと浮かない顔してて。ねぇ。
大野さんもきっと、もやもやしてんだろうな。
だってね、気づいちゃったんだもん。
きっと今、大野さんが潤くんに抱いている感情は、
俺が翔さんに抱いているそれと、全く一緒だってことに。
…あーあ。めんどくせぇ…