第1章 まぼろし
いつもの潤くん以上に不機嫌な翔さん。
…なんかあったな。こりゃ。
火曜日のレギュラー収録の朝、翔さんはひどく不機嫌な時がある。
いち。前日のニュースを見たファンが、ネット上で太った太ったあと騒いでいる時。
に。前日のニュースで、ひどい間違いをした時。
さん。その週の水曜日発売の週刊誌に、メンバーの恋愛沙汰の記事が載る時。
(大体翔さんはその手の情報を当事者より早く仕入れている)
よん。自分の恋愛沙汰に、いざこざが起こった時。
さて…どれかなぁ。今日は。
太っては、ない。
昨日のzeroも、何もやらかしてないはず。
…明日の週刊誌…は、何もまだ聞いてないからわからない。
で?…翔さん自身の恋愛沙汰?
…そんなに上手くいってないとは思わないけどなぁ。
だって、お相手は…
「翔ちゃん、どしたの?」
今、戦々恐々としてる翔さんの前に立ちはだかった、
「智くん、おはよ。」
…あ、やっぱり旦那には甘いわけね。翔さん。
朝っぱらから胸焼けするくらいそのあまぁ〜い笑顔を交歓するの、やめてほしい。
と、いうわけで翔さん自身のいざこざではない、と。
「で、智くんじゃなくて。」
「うん。どしたの?」
「智くんはちょっと座っといて。」
大野さんを自分の横にグイっと座らせた翔さんは。
「…潤。ちょっといい?」
え?何、潤くんなんかあったの…?